聖女の悲観、魔女の絶望、
宿命の霊性、絶対の孤独。

凋落する現代世界に対峙する、
愛と神秘の歴史劇。

神的少女降臨

2021年12月11日(土)より 
“愛と神秘”のロードショー

予告編

ジャンヌ・ダルクとは何か?

百年戦争、羊たちとの生活、神の声、オルレアン解放、異端審問、「愛国者」の固執、「革命家」の不安、「聖女」の悲観、「魔女」の絶望、繰り返す厄難、永遠の誓約、宿命の霊性、絶対の孤独…

カトリックの聖女。あるいは魔女。神の恩寵を受け祖国を救う愛国的英雄。民衆を鼓舞する革命の偶像。異端審問の末に火炙りにされた男装の女騎士。フランス国民劇の受難のヒロイン。 疫病と戦争の最中にあった15世紀初頭のフランスに実在した少女の物語は、絵画、音楽、文学、演劇、漫画、ゲームなど芸術と娯楽の様々な領域で幾度も題材にされた。

映画史においても枚挙にいとまがない。ジョルジュ・メリエス、カール・テオドール・ドライヤー、セシル・B・デミル、ヴィクター・フレミング、オットー・プレミンジャー、ロベルト・ロッセリーニ、ロベール・ブレッソン、ジャック・リヴェット、リュック・ベッソン…歴々たる映画作家たちがこの「歴史劇」の古典に取り組んでいる。メロドラマとして、社会風刺劇として、スリル満点のスペクタクルとして、恐れ慄くような美/崇高に迫る実験作として。フランスやハリウッドで、翻案やパロディも含めれば世界中で、時代の折々に作られてきた「ジャンヌ・ダルク映画」。その最新の変奏がスクリーンに還ってくる。

監督は、現代フランス映画において一筋縄ではいかない挑発的な作品を発表してきた鬼才、ブリュノ・デュモン。原作は、シャルル・ペギーの劇作『ジャンヌ・ダルク』(1897)と『ジャンヌ・ダルクの愛の秘義』(1910)。ペギーは、ジル・ドゥルーズ、ヴァルター・ベンヤミン、ジャン=リュック・ゴダール、そして須賀敦子らを魅了したカトリックの詩人・思想家であり、ジャンヌ・ダルクがイングランド軍から解放した都市オルレアンの出身。デュモンは、ジャンヌ・ダルクの生涯を特別な想いを持って描いたペギーの詩劇を、仰天ともいうべき演出・手法によって、二つの映画作品に仕上げた。
『ジャネット』では神の声を聞く体験と戦いに旅立つまでの幼年時代を、『ジャンヌ』では異端審問と火刑までを描いている。

スクリーン上にジャネット=ジャンヌがいる。そこでジャネット=ジャンヌは、歌い、踊り、ヘッドバンギングし、馬に乗り、甲冑を纏い、弁論し、抵抗し、何者にも支配されず、いつも孤独に闘っている。怠惰にも性急にも思える極めて独特な時間が全編にわたって流れる中、一体全体、何が起こっているのか!?
神話でも伝説でもなく、今、わたしたちの目の前で起こる現実の出来事として、ジャンヌ・ダルクが立っている。数多の「ジャンヌ・ダルク映画」とは全く別の様相を呈し、それまでのジャンヌ像を逆なでするかのような、ユニークでいて破壊的な本作。これは新たな視座からなされる「真なるもの」の探求なのだ。
画面を見つめながら震撼し、呆然とする間に途方もない地点へと連れ去られてしまうような経験と体験。破局を目前にしたように凋落していく現代世界に対峙する、愛と神秘の歴史劇。

作品紹介

ジャネット

ジャンヌ・ダルクの幼年時代を描く、破壊的な音楽劇


ジャンヌ・ダルクの幼年期が、奇妙奇天烈な破壊的ミュージカルに!?シャルル・ペギーのテキストの韻律に活力を与える歌。そこに響く激烈なる音楽。そして、あまりにぎこちない舞踊…。緊張と弛緩のとめどない反復の内に時間の感覚が消失し、奇異なまでの現代性が浮かび上がる。
音楽を担当するのは、デスメタル、プログレ、ブレイクコア、バロック音楽などの要素を取り込んだユニークなスタイルで活躍する異才Igorrr。振付は、現代フランスを代表するコレオグラファー、フィリップ・ドゥクフレが担当している。

物語

1425年、フランスとイングランドによる王位継承権をめぐる「百年戦争」の真っただ中。幼いジャネット(ジャンヌ・ダルクの幼年期の呼び名)は、小さな村ドンレミで羊の世話をして暮らしていた。ある日、友だちのオーヴィエットに、イングランドによって引き起こされた耐え難い苦しみを打ち明ける。思い悩む少女を修道女のジェルヴェーズは諭そうとするが、ジャネットは神の声を聴く体験を通し、フランス王国を救うために武器を取る覚悟を決める。

監督・脚本:ブリュノ・デュモン/原作:シャルル・ペギー/撮影:ギヨーム・デフォンタン/音楽:Igorrr/振付:フィリップ・ドゥクフレ
出演:リーズ・ルプラ・プリュドム、ジャンヌ・ヴォワザン、リュシル・グーティエ ほか
2017年/112分/カラー/ビスタ/フランス語/フランス/日本語字幕:高部義之
原題:Jeannette, l'enfance de Jeanne d'Arc 英題: Jeannette, the childhood of Joan of Arc
© 3B Productions
配給:ユーロスペース

ジャンヌ

救国の戦いから異端審問、そして刑の執行へ──華麗なる心理活劇


馬術ショーのような戦闘場面。言葉が累積し充満する裁判場面。あまりに奇想天外な相貌を見せた『ジャネット』と打って変わり、様式的な画面と白熱の議論に彩られた、サスペンスとアクションが華麗に展開する。『クレールの膝』『満月の夜』などエリック・ロメール作品で知られる、ファブリス・ルキーニがフランス国王シャルル7世として出演。フランスの歌手クリストフが劇伴の作曲を担当。異端審問の陪席者の一人として不気味に出演し、その美しい歌声を聞かせている。

物語

15世紀、フランスの王位継承をめぐって、フランスとイングランドが血で血を洗う争いの時代。若きジャンヌ・ダルクは、「フランスを救え」と言う神の声に導かれてフランス王の軍隊を率いていた。神、愛、罪、福音と祈りを説くジャンヌだが、その力に畏怖と疑心を持った味方の軍内部から反発が生じる。やがてジャンヌはイングランド側に捕らえられ、教会によって異端審問にかけられる。抑圧と支配の濃密な論理で迫る「雄弁」な男たちを相手に、反駁の叫びと沈黙で応じるジャンヌ。告発に屈せず、自らの霊性と使命に忠実であり続ける。

監督・脚本:ブリュノ・デュモン/原作:シャルル・ペギー/撮影:デイビット・シャンビル/音楽:クリストフ
出演:リーズ・ルプラ・プリュドム、ファブリス・ルキーニ、クリストフほか
2019年/138分/カラー/ビスタ/フランス語/フランス/日本語字幕:高部義之
原題:Jeanne 英題: Joan of Arc
配給:ユーロスペース

監督

ブリュノ・デュモンBruno Dumont

1958年3月14日、フランス北部フランドル地方の町バイユール生まれ。哲学を学んだ後、様々な分野の職業を転々とする。その後、80年代後半から教育映画や産業映画などを撮り始める。10年ほどの間に多くの作品を手掛けた。
映画長編第1作となった『ジーザスの日々』(1997)が、カンヌ国際映画祭のカメラドール特別賞を始め、ジャン・ヴィゴ賞、またアヴィニョンやシカゴなど国際映画祭などで受賞。続く第2作『ユマニテ』(1999)では、カンヌ国際映画祭グランプリ、主演男優賞、主演女優賞を受賞。2006年には『フランドル』で2度目のカンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、その快挙に世界の注目を集めた。人間の実存に迫る独特な作風で、議論を呼び起こす作品を作り続けている。

主な監督作 FILMOGRAPHY
  • 1997年ジーザスの日々 La vie de Jésus カンヌ国際映画カメラドール特別賞
  • 1999年ユマニテ Humanité  カンヌ国際映画祭グランプリ、最優秀男優賞、最優秀女優賞
  • 2003年欲望の旅 Twentynine Palms ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門出品
  • 2006年フランドル Flandres  カンヌ国際映画祭グランプリ
  • 2009年ハデウェイヒHadewijch サンセバスチャン国際映画祭コンペティション部門出品
  • 2011年OUTSIDE SATAN Hors Satan  カンヌ国際映画祭ある視点部門出品
  • 2013年カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇 Camille Claudel 1915 ベルリン映画祭コンペティション部門出品
  • 2014年プティ・カンカン(TVシリーズ) P'tit Quinquin カンヌ国際映画祭監督週間出品
  • 2016年SLACK BAY カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
  • 2017年ジャネット Jeannette, l'enfance de Jeanne d'Arc カンヌ国際映画祭監督週間出品
  • 2019年ジャンヌ Jeanne カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品
  • 2019年プティ・カンカン2 Coincoin et les z'inhumains (TVシリーズ)
  • 2021年FRANCE France カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品

原作

シャルル・ペギーCharles Péguy(1873ー1914)

1873年1月7日、ジャンヌ・ダルクが解放した歴史を持つ都市オルレアン生まれ。フランスにおいて異彩を放つ詩人・作家・思想家。世論を二分した「ドレフュス事件」への積極的な関与と、雑誌「半月手帖」の創刊を経て、社会主義者からカトリック左派へと立場を移していく。主な論考・著書に「我々の祖国」(1905)、「われらの青春」(1910)、「金銭」(1913)、「エヴァ」(1913)、没後刊行された「クリオ 歴史と異教的魂の対話」(1931)など。第一次世界大戦勃発から間もない1914年9月5日、戦地にて41歳で死去。近年、右派と左派双方のフランス知識人による再評価が進んでいる。
『ジャネット』は戯曲「ジャンヌ・ダルク」(1897年)、詩劇「ジャンヌ・ダルクの愛と秘儀」(1910年)、『ジャンヌ』は「ジャンヌ・ダルク」に基づいている。

スタッフ

『ジャネット』振付:フィリップ・ドゥクフレ

1961年10月22日フランス、ヌイイ=シュル=セーヌ生まれの振付家。父親は社会学者で歴史家のアンドレ=クレマン・ドゥクフレ。アメリカのコミックやアニメから、バウハウスの振付家であったオスカー・シュレンマーの作品まで移り変わるイメージによって育まれた。1983年にダンス・カンパニー「DCA」を立ち上げ、作品「Vague Café」によってバニョレ国際コンクールで優勝。フランス革命200周年祭の記念パレードの振付けに抜擢された。1992年にはアルベールビル冬季オリンピックの開・閉会式の演出を担当し、国際的に彼の名が知られるようになる。そこでパリ近郊サン・ドニの元ヒーティング・プラントを改築し、彼の本拠地となる劇場「ラ・ショフリー」を開く。その後、自身のカンパニーによる「Shazam!」「Ilris」などをはじめ、NYのシルク・ドゥ・ソレイユでの振付や、パリで行った「Solo」のソロ公演など、全世界で公演を行う。カンヌ国際映画祭などの主要な文化イベントにも参加する他、ミュージック・ビデオやCM、ヤン・クーネン、ツァイ・ミンリャンなど著名な監督の映画にも参加している。

『ジャネット』音楽:Igorrr

フランスの電子音楽家Gautier Serreによるソロプロジェクト。デスメタル、プログレ、ブレイクコア、バロック音楽などの要素を取り込んだユニークなスタイルで活躍する異才。様々なヴォーカリストやブラックメタルの代表的なバンドMayhemのギタリストを迎えた楽曲制作などを行い、ジャンルやシーンを横断する世界的な活躍をしている。日本の漫画『ドロヘドロ』をイメージしたサウンドトラックCDへの参加も話題を呼んだ。

『ジャンヌ』音楽:クリストフ Christophe

フランスの歌手であり、作曲家。1965年、名曲「Aline」で世界的に認知され、成功を収める。1970年代初頭、ジャン=ミシェル・ジャールとの共同作業により、ピンク・フロイドやルー・リードなどのイギリスやアメリカのアーティストから多大な影響を受けたカルト的なアルバム「Les Paradis Perdus」を発表。ジョルジュ・ロートネル監督、ミムジー・ファーマー主演の『渚の果てにこの愛を』(1970)の音楽を作曲した後、映画のサウンドトラックを多く手掛ける。2020年、死去。

コメント

ジャネット
ジャンヌ

歴史的な事実を重んじることなく描いても、歴史を偽造することにはならず、むしろ歴史を生きた人間の「本質」を明かすことがあることを証明する映画だ。愛国主義などすべての利用主義から、ジャンヌを解放せよ!

太田昌国(評論家)
ジャネット
ジャンヌ

少女たちの手、足、指先、身体、声をとおして、私たちは生きていることを体感できる。その小さな手を振り上げるだけでいい、そこに立っているだけでもいい、踊る意味なんていらない、体を突き動かすその衝動、その必然が生きてるってことなんだ。

矢内原美邦(振付家・演出家・劇作家・ダンサー)
ジャネット
ジャンヌ

グレタ・トゥーンベリさんが中世に生まれ変わり、『不思議の国のアリス』の世界に飛び込んでしまったら、ひょっとしてこんなフィルムができたのかもしれない。歴代のジャンヌ・ダルク映画のなかでも、とりわけ愉しく、しかも聡明!『聖女ジャンヌ』で主演した岸田今日子さんに見ていただきたかったなあ。

四方田犬彦(映画・文学研究)
ジャネット
ジャンヌ

壮大な「伝統」に敢えて与することのないブリュノ・デュモンの『ジャネット』と『ジャンヌ』は、空の彼方にいるジャンヌと直接交信する冒険であり、ジャンヌ・ダルク映画史の「事件」であり続けることだろう。

竹下節子(比較文化史家・バロック音楽奏者)
ジャネット
ジャンヌ

『ジャネット』がジャンヌ・ダルクの恍惚を描こうとする試みだとすれば、『ジャンヌ』はその失墜、失われた光についての映画だ。

柳下毅一郎(映画評論家・翻訳家)
ジャネット

俳優たちは今にも笑い出しそうだが、この映画はジョークではない。今年ベストワン! きっとあなたも嫌いになる。

ジョン・ウォーターズ(映画監督)
ジャンヌ

神は存在する。その名はブリュノ・デュモン。続編は、より荒々しく、より神聖で、カトリック信者を震え上がらせる、敬虔な毒を持つ。

ジョン・ウォーターズ(映画監督)
ジャネット

不純で、奇妙で、雑然としていながら、格調のある傑作!

Cahiers du Cinéma
ジャネット

キッチュでストイック、神秘的で奇抜、過激で過剰。

Femme Actuelle
ジャンヌ

ふざけているようで本気。

The New York Times
ジャンヌ

ジャンヌの反抗精神の強靭さと純真さに心動かされる。

The New Yorker

劇場情報

地域 劇場名 TEL 公開日
北海道・東北
宮城 フォーラム仙台 022-728-7866 12月31日(金)~1月13日(木)
関東甲信越
東京 ユーロスペース 03-3461-0211 12月11日(土)~
神奈川 川崎市アートセンター 044-955-0107 1月15日(土)~21日(金)『ジャネット』
1月22日(土)~28日(金)『ジャンヌ』
長野 松本シネマセレクト 0263-98-4928 11月27日(土)爆音映画祭in松本
静岡 静岡シネギャラリー 054-250-0283 1月7日(金)~13日(木)『ジャネット』
1月14日(金)~20日(木)『ジャンヌ』
中部
愛知 名古屋シネマテーク 052-733-3959 2022年2月
関西
大阪 シネ・ヌーヴォ 06-6582-1416 2月12日(土)~25日(木)
京都 京都シネマ 075-353-4723 1月28日(金)~2月3日(木)『ジャネット』
2月4日(金)~10日(木)『ジャンヌ』